アルツハイマー病とは?病院は何科?検査・診断方法について解説

アルツハイマー病は、認知症を引き起こす最も大きな原因の一つです。アルツハイマー病を発症することで、海馬とその周辺に位置する脳の記憶をつかさどる部位が萎縮してしまい、もの忘れや判断力・注意力の低下を招きます。

アルツハイマー病は、現在のところ根本的に治療できる方法が見つかっていませんが、早期発見・早期治療によって症状の悪化を遅らせることが可能です。そのため本人の家族や周囲の方々が「認知症かも?」と感じた時点で、早めに病院を受診して検査・治療を受けることが今後のQOL(生活の質)を維持するために欠かせません。

本記事では、アルツハイマー病の原因や症状、検査・診断方法のほか、病院では何科を受診したら良いのかを解説します。

目次

アルツハイマー病とは?

高齢者のイメージ

アルツハイマー病とは、認知症の原因となる疾患の一つで、認知症の中でも最も患者数の多い「アルツハイマー型認知症」を引き起こす病気です。

脳内に毒性のあるたんぱく質が蓄積することで発症すると考えられており、認知症の初期症状としても知られる「もの忘れ」が主な症状となっています。

なお、「アルツハイマー」という名称は、アルツハイマー病を研究・報告したドイツの精神科医、アロイス・アルツハイマー博士に由来しています。

アルツハイマー病の原因

アルツハイマー病は脳内に「アミロイドベータ」や「タウ蛋白」と呼ばれる毒性のあるたんぱく質が蓄積し、このたんぱく質の働きによって脳の神経細胞が破壊されることが原因で発症すると考えられています。

なぜアミロイドベータが脳内に蓄積するのか、その詳しいメカニズムは判明していないものの、生活習慣病である糖尿病・高血圧を持っている方は、アルツハイマー病を発症する危険性が高まることがわかっています

また加齢そのものがアルツハイマー病の危険因子でもあり、65歳以上の高齢の方に多くみられます。

アルツハイマー病の症状

アルツハイマー病の初期症状としては、認知症の兆候として知られる「もの忘れ」がみられることが多いです。

短期記憶をつかさどる脳の海馬が萎縮することから、過去のことはよく覚えているものの、最近のことを記憶するのが難しくなる症状がみられます。加齢によるもの忘れとは異なり、自分が何かを忘れていること自体を自覚できないのもアルツハイマー病の特徴です。

アルツハイマー病が進行すると、もの忘れが悪化して自分が置いた通帳の場所がわからなくなり「通帳が盗まれた」という妄想が出てくるほか、今日の日付や今いる場所がわからなくなったり(見当識障害)、外出した際に帰り道がわからなくなってしまうなどの症状が現れます。

さらに進行すると、自分の家族のこともわからなくなり、食事や排泄にも介助が必要になるなど、自立した日常生活が困難となります。

アルツハイマー病と認知症の違い

アルツハイマー病は、「アルツハイマー病=認知症」と認識されることが多いですが、あくまでもアルツハイマー病は認知症を引き起こす原因の一つです。

認知症にはアルツハイマー型認知症のほかにも、血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症が存在しており、これら4つが認知症の主な種類として知られています。

血管性認知症は、脳梗塞・脳出血などの脳卒中が原因で脳の神経細胞が破壊されることで、脳卒中を起こした脳の部位ごとに特徴的な症状がみられる認知症です。

関連記事:血管性認知症とは?特徴・症状や原因、治療方法を医師が解説

レビー小体型認知症では、パーキンソン病の症状を伴うことが特徴で、妄想・幻覚などの症状が現れます。

関連記事:レビー小体型認知症とは?症状や進行速度、原因と治療法について解説

前頭側頭型認知症では、大きな性格の変化や自己中心的な行動、言語障害が主な症状となっています。

関連記事:前頭側頭型認知症とは?特徴(初期症状や進行速度、原因)を解説

アルツハイマー病が疑われる時に受診する病院は何科?

医者と患者のイメージ

最近家族のもの忘れがひどく、アルツハイマー病や認知症が疑われる場合には、早めに病院を受診して検査を受けることが重要です。

アルツハイマー病・認知症は、現在のところ根本的に治療する方法は見つかっていませんが、投薬やリハビリテーションによって症状の進行を遅らせることが可能だからです。

ここではアルツハイマー病の受診・相談が可能な専門機関についてご紹介します。

アルツハイマー病の診療科は精神科・脳神経内科

アルツハイマー病の疑いがある場合、受診できるのは精神科・脳神経内科などの診療科を設置する病院です。

ほかにも心療内科・老年科・老年病科・脳神経外科といった診療科でも、認知症の検査・診察を受け付けていることがあります。

病院によっては「もの忘れ外来」を設置し、認知症を専門とする医師が在籍していることもあるので、近隣の病院を探してみると良いでしょう。

地域包括支援センターで紹介も可能

アルツハイマー病が疑われる方本人が病院への受診を嫌がる場合や、加齢に伴うもの忘れなのかどうか判断に迷う場合などは、「地域包括支援センター」に相談してみるのもおすすめです。

地域包括支援センターは、高齢者の健康のために必要な医療・福祉を案内してくれる施設で、高齢者の健康・生活についての相談全般を受け付けています。

認知症の検査が受けられる病院が見つからない場合にも、地域包括支援センターの窓口で相談することにより、適切な医療機関の紹介を受けることができます。認知症が進行した後、要支援・要介護認定を受けるための手続きや、老人ホームの探し方などの支援を受けることもできるので、気軽に利用してみると良いでしょう。

なお、アルツハイマー病が疑われる家族が遠方に住んでいる場合、医療・福祉を利用する方本人が住む地域を管轄している地域包括支援センターが窓口になりますのでご注意ください

まずはかかりつけ医に相談を

アルツハイマー病ではないかと疑われる際には、まずは本人の健康状態や既往歴、服用している薬などをよく知るかかりつけ医に相談するのも有効です。

認知症の専門医ではなくとも、専門病院を受診すべきかどうかを判断してもらうことが可能で、必要に応じて紹介状を作成してもらい、医療機関での連携を取ることができるメリットがあります。

本人が精神科などの専門病院の受診を拒否する場合にも、かかりつけ医からの助言によって受診に対して前向きになるケースも多いため、困った時には積極的にかかりつけ医に相談してみてください

アルツハイマー病の検査・診断方法

聴診器とネームプレート

アルツハイマー病の診断では、下記のような検査を用いることが多いです。

  • 本人・家族への問診
  • 血液検査(MCIスクリーニング検査)
  • 神経心理学検査
  • 脳画像検査

それぞれの検査・診断方法について詳しく解説します。

本人・家族への問診

アルツハイマー病が疑われる方の診察では、まずは本人や家族の方への問診から始まります。受診するきっかけとなった言動や、アルツハイマー病が疑われる症状が現れ始めたタイミング、これまでかかったことのある病気や、現在服用している薬などが質問されます。

本人が受診に乗り気ではない場合、周囲の家族からの情報が判断材料となるため、受診の際には症状・言動や受診のきっかけについてメモを作成しておくと安心です。

血液検査(MCIスクリーニング検査)

アルツハイマー病の検査では、認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」のリスクを調べるための血液検査が行われることがあります。「MCIスクリーニング検査」とも呼ばれ、自覚症状がない段階でも認知症の発症リスクを調べることが可能です。

健常者と認知症の中間状態とされるMCIは、適切な治療や認知機能トレーニングを実施することにより、健常な状態に回復することがわかっています。認知症を発症する前の予防のためにも、健康診断のように定期的にMCIスクリーニング検査を受けてみると良いでしょう。

神経心理学検査

神経心理学検査は、医師による本人への質問や簡単なテストにより、認知症の可能性を判断する検査です。一定の点数を下回ると認知症の疑いありと判断され、後述する脳画像検査などとともに総合的に診断されます。

実施する検査内容は病院によって異なりますが、「改訂長谷川式簡易知能評価(HDS-R)」「時計描画テスト」などの種類があります。

関連記事:家族が認知症かも?初期症状に対してのチェックリストを確認しよう

脳画像検査

脳画像検査では、CT・MRIなどを使った検査により、脳の萎縮や血流の低下を調べます

アルツハイマー病の場合、脳の特定の部位で血流・代謝の低下がみられるため、こうした症状が現れているかをもとに、別の病気と鑑別しながら診断を下します。

アルツハイマー病の治療方法

医者のイメージ

アルツハイマー病と診断された場合、現在は症状を完全に治療する方法は見つかっていないため、対症療法や症状の進行を遅らせる治療が中心となります。

主に薬物療法・非薬物療法の2つに分けられるため、それぞれの治療方法をご紹介します。

薬物療法

薬物療法では、4種類の抗認知症薬を患者様に合わせて用いることで、アルツハイマー病の症状の進行を抑制します。

暴言・暴力や幻覚・妄想が強く現れている場合には抗精神病薬を処方するなど、一人ひとりの症状に合わせて薬剤を調整しながら治療を行います。

非薬物療法

非薬物療法では、薬を使用することなく運動療法や作業療法を用いることで、脳の機能の改善を目指します

本人が興味のあることや趣味としていることに取り組むことで、脳の活性化を促して精神の安定を図るのが目的です。

昔の出来事を思い出す「回想法」や、計算ドリルなどに取り組む「認知リハビリテーション」のほか、音楽療法・園芸療法などが取り入れられることもあります。

まとめ

アルツハイマー病は、認知症を引き起こす原因の一つであり、毒性のあるたんぱく質が脳に蓄積することで発症します。アルツハイマー病の初期症状として「もの忘れ」が挙げられ、同じことを何度も質問したり、探し物をすることが多くなる傾向にあります。

アルツハイマー病の治療では早期発見・早期治療が重要になるため、アルツハイマー病が疑われる時には、「もの忘れ外来」を設置する病院をはじめ、精神科・脳神経内科を受診するのが大切です。アルツハイマー病の検査では神経心理学検査・脳画像検査のほか、本人や家族への問診も行われるので、これまでの症状や受診のきっかけについてメモを作成してから受診すると良いでしょう。

本人が病院への受診を拒否する場合には、地域包括支援センターやかかりつけ医に相談することも視野に入れながら、早期発見・早期治療を心がけるようにしてください。

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