アルツハイマーと認知症は言葉として一括りにされることが多く、似たような症状・病気と思われがちですが、実は言葉の意味としても、医学的にも明確な違いがあります。
本記事ではアルツハイマー病と認知症の違いについて、症状・原因・治療方法の観点から、医療的な考え方を踏まえつつ、できるだけわかりやすく解説します。
適切な治療方法や予防方法についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
アルツハイマーと認知症の違いは?

認知症とは「状態や症状の総称」であり、アルツハイマー病は「認知症を引き起こす原因となる病気の一つ」です。つまり「認知症」という大きな枠の中に「アルツハイマー病」が含まれる関係にあります。
概念の違いだけでなく、下記の表の通り原因や症状の進行などにも違いがあります。
| 認知症 | アルツハイマー病 | |
|---|---|---|
| 概念 | 状態・症候群の総称 | 病名(疾患名) |
| 位置づけ | 結果として現れる症状 | 認知症の原因の一つ |
| 種類 | 複数存在する | 単一の疾患 |
| 原因 | 疾患によって異なる | 脳内の異常なたんぱく質の蓄積 |
| 進行 | 原因によりさまざま | 比較的ゆっくり進行 |
このように認知症とアルツハイマー病は混同されやすいものの、医学的には役割や意味が異なります。違いを正しく理解することで、不安を必要以上に抱えず、適切なタイミングで医療機関に相談できるようになります。
違い① 言葉の意味(状態と病気)
まず認知症とアルツハイマー病の基本的な違いは、言葉が指している対象そのものです。
認知症という言葉は特定の病名を指すものではなく、記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている「状態」をまとめて表現した医学用語です。つまり認知症とは症状や状態の総称であり、原因となる病気は一つではありません。
一方でアルツハイマー病は、認知症を引き起こす原因疾患の一つで、正式な「病名」です。医療現場では「アルツハイマー病による認知症」や「アルツハイマー型認知症」といった名前で使われることが多く、認知症という大きな枠の中にアルツハイマー病が含まれている関係になります。
状態の病気の違いを理解せずにいると、「認知症=アルツハイマー病」と誤解してしまい、不必要に強い不安を感じてしまうこともあるため注意が必要です。
違い② 原因(複数の原因疾患)
認知症とアルツハイマー病は原因の考え方も異なります。
認知症は状態を表す言葉であるため、その原因は一つではありません。代表的なものとしては、アルツハイマー病のほか、脳梗塞や脳出血などが関係する血管性認知症、幻視やパーキンソン症状を伴うレビー小体型認知症、性格や行動の変化が目立つ前頭側頭型認知症などが知られています。
一方、アルツハイマー病は、脳内にアミロイドβやタウタンパクと呼ばれる異常なたんぱく質が蓄積し、脳細胞が徐々に障害されていくことが原因と考えられているモノです。
このように認知症は「さまざまな病気の結果として起こる状態」であり、アルツハイマー病は「その原因の一つ」という位置付けになります。
違い③ 症状・進行(種類で変わる)
認知症とアルツハイマー病では、症状や進行の仕方にも違いがあります。認知症は状態の総称であるため、原因となる疾患によって症状の現れ方や進行スピードは大きく異なります。
たとえばアルツハイマー病による認知症では、初期には物忘れなど記憶障害が目立ち、比較的ゆっくり進行していくのが特徴です。
一方、血管性認知症では、脳血管障害が起こったタイミングで症状が急に悪化することがあります。またレビー小体型認知症では、幻視や注意力の変動が見られる場合もあります。
このように「認知症」という一言でまとめられていても、その中身は多様であり、アルツハイマー病はあくまでその一つに過ぎません。
認知症とは?アルツハイマー型認知症とは?

認知症とアルツハイマー型認知症は混同されやすく、誤解が不安や戸惑いにつながることもあります。
ここではまず「認知症」とは何かを整理し、そのうえで「アルツハイマー型認知症」がどのような特徴を持つのかを、医学的な考え方を踏まえて解説します。
認知症
認知症とは記憶力や判断力、理解力といった認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障が生じる状態を指す医学用語です。
重要なのは、上述した通り認知症が特定の病名ではなく、あくまで「症状や状態の総称」である点です。
加齢に伴う単なる物忘れとは異なり、認知症では主に以下の変化が見られます。
- 新しい出来事を覚えられない
- 時間や場所の感覚がわからなくなる
- 複雑な作業が難しくなる
- 言葉が出ない・理解できない
- 行き先がわからなくなり、あてもなく歩き回る
- 感情のコントロールができずに攻撃的になる
これらの症状によって仕事や家事、金銭管理などの日常的な活動が困難になることが特徴です。
また認知症の原因は一つではなく、さまざまな疾患が関係しており、原因によって症状の現れ方や進行の仕方は大きく異なります。そのため医師に認知症と診断された場合は、背景にどのような原因疾患があるのかを見極めることが重要です。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症はアルツハイマー病が原因となって起こる認知症を指します。一般的には「アルツハイマー病による認知症」とも呼ばれます。
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多いタイプで、全体の約60〜70%を占めるとされています。(政府広報オンライン:知っておきたい認知症の基本)特徴としては初期の段階では物忘れなどの記憶障害が目立ち、特に新しい出来事を覚えられなくなることが多いです。
進行は比較的ゆっくりで、時間の経過とともに判断力や理解力、見当識などが徐々に低下していくのが特徴です。
早期の段階で適切な診断や治療を受ければ進行を緩やかにできるため、気になる症状がある場合には早めに医療機関へ相談しましょう。
アルツハイマー型認知症の診断基準と検査方法

アルツハイマー型認知症の診断は一つの検査だけで確定されるものではなく、複数の情報を総合的に判断して行われます。
一般的には、まず本人や家族からの聞き取りによって、物忘れの内容や生活への影響、症状が始まった時期や進行の様子などを確認します。
そのうえで記憶力や判断力、注意力などを評価する「認知機能検査」が行われることが多いです。代表的なものに、MMSE(ミニメンタルステート検査)などがあります。
また他の疾患との鑑別を行うため、「血液検査」やCT・MRIなどの「画像検査」を実施し、脳の萎縮の程度や脳血管障害の有無を確認します。近年では必要に応じてPET検査などが行われる場合もあります。
これらの検査結果を総合し、他の原因による認知症や一時的な認知機能低下を除外したうえで、アルツハイマー型認知症と診断されるのが一般的です。
アルツハイマー病認知症の治療と向き合い方

アルツハイマー病認知症を完全に治す治療法は、現時点では確立されていません。しかし症状の進行を緩やかにし、生活の質を保つことを目的とした治療は行われています。
治療の中心となるのは薬物療法です。代表的なものとして「コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)」や「メマンチン」などがあります。
また近年では「レカネマブ(レケンビ)」や「ドナネマブ」などの新しい治療薬も登場しており、現在承認・使用が進められています。ただし効果や副作用には個人差があるため、医師の判断が必要です。
なお薬物療法だけでなく、生活環境の調整やリハビリテーション、周囲の理解と支援も重要です。本人が安心して過ごせる環境を整えることや、できることを継続できるようにサポートすることが、症状の安定につながる場合もあります。
アルツハイマー病認知症と向き合う際には、本人だけで抱え込まず、家族や医療・介護の専門職と連携しながら、長期的な視点で対応していくことが大切です。
アルツハイマー型認知症を予防する方法

アルツハイマー型認知症を確実に予防する方法は、現段階で明らかになっていません。しかし発症リスクを低下させる可能性がある生活習慣については、多くの研究が行われています。
一般的には、以下の習慣を心がけることが重要とされています。
- 適度な運動習慣
- バランスの取れた食事
- 十分な睡眠
- 人との交流
- 趣味や知的活動
人との交流や趣味は脳への刺激となり、良い影響を与える可能性があると考えられています。さらに、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の管理も、認知症予防の観点から注目されています。
これらはあくまでリスクを下げるための取り組みであり、過度に神経質になる必要はありません。まずは日々の生活の中で無理なく続けることが大切です。また将来への不安を感じた場合は、早めに医療機関に相談することも予防の一環となります。
アルツハイマー病と認知症の違いを把握して適切な治療を
本記事で解説した通り、アルツハイマー病は、認知症を引き起こす原因疾患の一つであり「病名」です。認知症は、記憶力・判断力・見当識などの低下が長く続く「状態」であり、アルツハイマー病は認知症の中で最も多い病気に該当します。
認知症には、アルツハイマー病のほかにも、血管性認知症やレビー小体型認知症などの複数の種類が存在します。そのため、認知症と見られる症状が見られたら、医師に相談して、自分の症状がどの種類に該当するかを特定してもらうことが重要です。病名と原因がわかれば、適切な治療を進めることができ、症状の緩和につながります。
ただし、アルツハイマー型認知症はゆっくり進行するため、気づいたときには症状が進行している可能性もあります。「最近物忘れが激しい」など、少しでも気になることがあれば、最寄りの病院・クリニックへ相談することをおすすめします。

