「最近、もの忘れが多くなった」「家族の様子がおかしい気がする」そんな不安を感じても、どこに相談すれば良いのか分からず、病院への受診を躊躇してしまう方は少なくありません。そんな時に活用したいのが、「認知症外来(もの忘れ外来)」です。
認知症外来とは、認知症の早期発見・早期治療を目的とした専門外来のことを指します。認知症かどうか判断に迷う段階でも、気軽に相談できる場となっています。
本記事では認知症外来の役割や受診を検討すべき症状、診察の流れについて詳しく解説します。
認知症外来とは?

認知症外来(もの忘れ外来)は認知症の診断・治療を専門的に行う外来です。一般の内科や脳神経外科とは異なり、認知症に特化した専門医が、問診・検査・診断を一貫して行うのが特徴です。
「認知症かもしれない」という漠然とした不安の段階からも相談可能で、必要に応じて適切な治療や支援につなげられるのが認知症外来です。
保険診療で検査が受けられる
認知症外来における診察や検査は基本的に保険診療が適用されます。初診料や検査費用の自己負担額は、年齢や所得により1〜3割となるため、費用面での心配は少ないでしょう。
認知機能検査や血液検査、画像検査(CT・MRIなど)も保険診療の範囲内で受けられることが多く、高額な自費診療になることはほとんどありません。費用が気になって受診を迷っている方も、この点は安心材料となるはずです。
紹介状不要で受診できる
多くの認知症外来では紹介状がなくても受診が可能です。「まずはかかりつけ医に相談してから…」と思われるかもしれませんが、認知症の疑いがある場合、直接専門外来を受診することで、早期診断・早期治療につながることも多いです。
もちろん、かかりつけ医からの紹介状を持参しておくと、これまでの治療経過や服薬状況などの情報が共有されるため、よりスムーズな診察が可能になります。紹介状の有無にかかわらず、気になる症状があれば早めの相談を検討してみましょう。
家族だけの「もの忘れ相談」も受付可能
「本人は認知症を疑われることを嫌がる」「受診を拒否される」といったケースは少なくありません。そうした状況でも家族の不安を解消できるよう、多くの認知症外来では、家族だけでの相談(もの忘れ相談など)も受け付けています。
まず家族が専門医に状況を説明し、受診の必要性や対応方法についてアドバイスを受ける。その後、本人を説得する方法や、受診につなげるためのサポートについても相談するといった流れで治療を始めることが可能です。「本人が来てくれないから…」と諦めず、まずは家族だけでも相談してみることをおすすめします。
なお、医療機関によっては、本人不在の相談は保険適用外(自費)となる場合があります。
関連記事:認知症の病院は何科を受診する?診療科や検査費用についても解説
認知症外来を検討したい症状

認知症は早期発見・早期治療が重要ですが、「年齢のせいだろう」「まだ大丈夫」と先延ばしにしてしまうケースも多く見られます。ここでは認知症外来の受診を検討すべき代表的な症状をご紹介しましょう。
日常生活に支障が出るもの忘れ
年齢を重ねると誰でももの忘れは増えるものです。しかし「年齢相応のもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」には明確な違いがあります。
年齢相応のもの忘れは、「昨晩何を食べたか思い出せない」程度のものですが、認知症の場合は「食事をしたこと自体を忘れる」「同じ質問を何度も繰り返す」など、日常生活に支障が出るレベルになります。
また、もの忘れを指摘されても自覚がない、もの忘れをごまかそうとする、といった行動も認知症の特徴の一つです。家族にこうした変化が見られたら、早めの受診をご検討ください。
時間や場所の感覚が曖昧になる
認知症の初期症状として、時間や場所の感覚が曖昧になることがあります。具体的には、以下のような症状が見られます。
- 今日が何日か分からなくなる
- 季節感がなくなる(真夏に厚着をするなど)
- 慣れた道で迷う
- 自宅のトイレの場所が分からなくなる
- 昼夜が逆転する
「慣れた場所で迷う」「自宅内で迷う」といった症状は、特に注意が必要な認知症のサインです。散歩に出かけて帰り道が分からなくなったり、近所のスーパーへの道が分からなくなったりといった変化があれば、早めに専門医に相談してみましょう。
性格や行動の変化が見られる
認知症ではもの忘れ以外にも性格・行動に変化が現れることがあります。これらは「周辺症状」と呼ばれ、家族にとって大きな負担となることも少なくありません。
- 些細なことで怒りっぽくなる
- 疑い深くなり、家族を泥棒扱いする
- 意欲がなくなり、趣味や外出をしなくなる
- 身だしなみに無頓着になる
- 夜中に徘徊する
- 同じ物を何度も買ってくる
「昔はこんな性格じゃなかったのに」「急に人が変わったようだ」と感じたら、認知症の可能性を疑う必要が出てきます。
性格や行動の変化は、家族が最初に気づく重要なサインなので、違和感を感じたら早めに認知症外来を受診してみてください。
関連記事:認知症の症状を段階ごとに解説|早まる原因についても【医師監修】
関連記事:認知症の周辺症状とは?原因・主な症状・出現時期・対処法について解説!
認知症外来での診察の流れ

「認知症外来ではどのような診察を受けるのだろう」と不安に感じる方向けに、ここでは初診から診断までの一般的な流れをご説明します。
予約から初診まで
多くの認知症外来では、事前予約制を採用しています。電話やホームページから予約を取り、指定された日時に来院するのが一般的です。
初診時には、可能な限り家族も同席することをおすすめします。これは本人が症状を正確に説明できない場合や、日常生活での変化を家族の視点から伝えることで、より正確な診断につながるからです。
また初診時には健康保険証・マイナンバーカード、お薬手帳(服薬中の薬がある場合)、紹介状(手元にある場合)を持参しましょう。
問診で確認される内容
初診では、まずは医師による詳しい問診が行われます。具体的には以下のような内容を確認します。
- いつ頃から、どのような症状が出ているか
- もの忘れの具体的な事例
- 日常生活での困りごと
- これまでの病歴や服薬状況
問診では本人だけでなく家族からの情報も重要になります。事前に気になる症状や事例をメモしておくと、スムーズに説明できるでしょう。「いつから」「どんな変化があったか」「どの程度困っているか」といった情報を整理しておくことをおすすめします。
診断結果と今後の治療方針
問診と各種検査の結果をもとに医師が診断を行います。認知症と診断された場合は、その種類(アルツハイマー型、血管性認知症など)や進行度、今後の治療方針について説明を受けることになります。
治療方針に関しては、認知症の種類や進行度、本人の生活環境などによっても異なります。薬物療法、リハビリテーション、生活指導など、一人ひとりに合わせた治療計画が立てられるのが一般的です。また、介護保険の申請や福祉サービスの利用についても、専門的なアドバイスを受けることができます。
多くの認知症は進行性の病で完治は難しいというイメージを持たれがちですが、適切な治療とサポートにより、症状の進行を遅らせたり、生活の質を維持したりすることは可能です。不安なことがあれば遠慮なく医師に質問してみましょう。
認知症外来で受けられる検査の種類

認知症の診断では、複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。ここでは認知症外来で行われる代表的な検査についてご説明します。
認知機能検査(長谷川式スケール・MMSEなど)
認知機能検査は記憶力・計算力・見当識(時間や場所の認識)などを評価する検査です。代表的な検査方法には、長谷川式認知症スケール(HDS-R)やMMSE(ミニメンタルステート検査)があります。
質問に答えたり、簡単な計算や図形の模写を行ったりすることで、認知機能の状態を数値化する検査です。検査時間は15〜30分程度で、痛みを伴うものではないので、安心して検査を受けられるでしょう。
画像検査(CT・MRI・SPECTなど)
認知症の検査では脳の状態を調べるための画像検査が行われます。CTやMRIなどを用いて、脳の萎縮や梗塞、出血などの有無を確認します。
また、SPECT(スペクト)という検査では、脳の血流状態を調べることで、アルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症などの鑑別に役立ちます。これらの画像検査により、認知症の原因や種類をより正確に診断しやすくなります。
検査時間はCTで10〜15分程度、MRIで30〜60分程度となっています。閉所恐怖症の方はMRIに苦手意識がある場合もありますので、事前に医師に相談しておくとよいでしょう。
血液検査やその他の検査
血液検査では甲状腺機能低下症やビタミンB12欠乏症など、認知症に似た症状を引き起こす他の病気がないかを調べます。これらの病気は適切な治療により症状が改善する可能性があるため、早期発見・早期治療が重要になります。
また必要に応じて心理検査や脳波検査などが行われることもあるでしょう。これらの検査を組み合わせることで、より正確な診断と適切な治療方針の決定に役立ちます。
関連記事:認知症の検査では何が行われる?病院での診断の方法・流れを解説
まとめ
認知症外来(もの忘れ外来)は、認知症の早期発見・早期治療を目的とした専門外来です。保険診療で受けられ、紹介状も不要、家族だけの相談も可能など、受診のハードルは決して高くありません。
日常生活に支障が出るもの忘れ、時間や場所の感覚の混乱、性格や行動の変化などの症状が見られたら、早めに認知症外来への受診を検討してみてください。認知症は早期発見・早期治療により、症状の進行を緩やかにすることが可能です。
「もしかして…」と感じたら、一人で悩まず、まずは専門医に相談してみましょう。本人や家族を含めて生活の質を維持・向上させるためにも、積極的に認知症外来を活用してみてください。

