認知症による「徘徊」の原因とは?家族の不安を和らげる予防・対処法

認知症の方の行動の中でも、家族が不安を感じやすい行動の一つが「徘徊」です。大切な家族が突然外出し、道に迷って帰れなくなったり、夜中に家の中を歩き回ったりする姿を見ると、どう対応すべきか戸惑ってしまうことでしょう。徘徊は認知症の症状のひとつであり、本人にとっても辛い体験です。

徘徊の原因についての理解しておくことで、徘徊の発生頻度を減らしたり、早期対応につなげたりする一助になります。本記事では、認知症による徘徊の原因から予防法、発生時の対処法まで、家族が不安を和らげるために知っておくべき情報を詳しく解説します。

目次

認知症による徘徊とは

認知症による徘徊とは、記憶障害や見当識障害などの認知症の症状により、目的もなく歩き回る行動、もしくは特定の目的を持って外出したものの、認知機能の低下によって道に迷ってしまう状態を指します。

徘徊と言えば家の外に出てしまう屋外徘徊をイメージする方が多いですが、夜間に家の中を目的なく歩き回る屋内徘徊も代表的な症状の一つです。屋外徘徊では家に戻れずに行方不明になるリスクや交通事故に巻き込まれるリスクがありますが、屋内徘徊でも家族の睡眠を妨げてしまうなどの影響を及ぼすことがあります。

認知症によって徘徊が起こる原因

認知症によって徘徊が起こる原因としては、以下の4つが挙げられます。

  • 記憶障害による混乱・不安
  • 過去の習慣や役割の再現
  • 不安・ストレス
  • 前頭側頭型認知症の発症

それぞれの原因について詳しく解説します。

記憶障害による混乱・不安

認知症の中核症状である記憶障害は、徘徊の最も大きな原因のひとつです。短期記憶の障害により、今いる場所や時間がわからなくなってしまい、徘徊に結びついてしまいます。たとえば、施設にいる方が「家に帰る」と言って外に出ようとしたり、引っ越しで環境が変わったことにより、自宅にいるのに「ここは自分の家ではない」と感じて外に出ようとしたりする例が挙げられます。

これは現在の記憶よりも過去の記憶の方が鮮明に残っていることが原因です。また、時間感覚が失われてしまうことで、夜中に「仕事に行かなければ」と外出しようとしたり、昼間に「夕食の準備をしなければ」と台所に向かったりする行動も、この記憶障害が原因です。

過去の習慣や役割の再現

長年続けてきた習慣や社会的役割は、認知症になっても強く残り続けます。これが徘徊の原因となることがあります。

たとえば、長年会社員として働いていた方が「会社に行かなければ」と外出しようとしたり、商店を営んでいた方が「お店を開けなければ」と外に出ようとしたりする例が挙げられます。子どもの迎えや買い物など、家庭での役割を果たそうとして外出し、徘徊につながるケースもあります。

これらの行動は、本人にとって普段通りの行動であり、必要な行動であると認識されているため、家族が止めようとしても強い抵抗を示すことがあります。「今日は会社はお休みですよ」「まだ迎えの時間には早いよ」などと話を合わせながら落ち着かせることが大切です。

不安・ストレス

認知症の方は、引っ越しに伴う環境の変化や理解力の低下などが原因となって、強い不安やストレスを感じることがあります。この心理的な不安・ストレスが、徘徊の引き金となるケースも多いです。

たとえば、家族に怒られたことが怖い記憶として残ってしまい、自宅から逃げようと外出してしまうことがあります。家族の介護疲れや苛立ちを感じ取り、居場所がないと感じて外に出てしまうこともあります。認知症の方は、言葉では表現できない感情を行動で表すことが多いことを理解しておきましょう

前頭側頭型認知症の発症

前頭側頭型認知症を発症している場合、前頭葉や側頭葉の機能障害により、衝動的・突発的な外出や徘徊が起こりやすくなります。前頭側頭型認知症では、社会的認知機能や実行機能の障害により、危険性の判断や社会的ルールの理解が困難になるため、交通量の多い道路などへ不用意に出てしまうことがあります。

同じ行動を繰り返す「常同行動」の症状により、同じ道を何度も歩いたり、同じ場所を訪れたりする徘徊パターンが見られることもあります。

前頭側頭型認知症とは?特徴(初期症状や進行速度、原因)を解説

認知症による徘徊を予防する方法

続いて、認知症による徘徊を予防する方法について、以下の4つのポイントから解説します。

  • 安心できる環境を作る
  • 適度な運動・外出を習慣化する
  • 家族や地域とのコミュニケーションを増やす
  • GPS機器やカメラなどの見守りツールを活用する

一つひとつ順番にご紹介しましょう。

安心できる環境を作る

徘徊を予防するために最も重要なのは、認知症の方が安心して過ごせる環境を整えることです。

屋内徘徊が見られる場合には、家の中を整理整頓し、危険なものは手が届かない場所に収納すると良いでしょう。夜間の徘徊に備えて照明を増やしたり、転倒を防ぐために段差をなくすなどの対処も有効です。また、トイレや寝室への動線を分かりやすくしたり、案内板をドアにかけたりと、徘徊を防ぐ工夫を行うと良いでしょう。

関連記事:医師が教える認知症の介護の基本|大切な心構えと症状別接し方ガイド

不安・ストレスによる徘徊が考えられる場合には、思い出の品や写真を飾り、「ここが自分の居場所である」ことを認識しやすくするのも良いでしょう。カレンダーや時計を見やすい場所に設置し、時間の見当識を保てるようにすることも効果的です。

適度な運動・外出を習慣化する

適度な運動や外出は、徘徊の予防に効果的です。日中に十分な活動を行うことで、夜間の安眠につながり、夜間徘徊の防止にもつながります。散歩やラジオ体操、園芸作業など、本人が興味を持てる活動を見つけることが理想的です。デイサービスやデイケアを利用し、他者との交流を持つことも良い刺激となります。

ただし、過度な運動は疲労やストレスの原因となるため、本人の体力や気分に合わせて調整することが必要です。外出時は安全面に配慮し、可能な範囲で同行や見守りを検討しましょう。

下記の記事では認知症予防におすすめなコグニサイズを動画付きでご紹介しているので是非ご覧ください。

認知症予防トレーニングを動画付きで紹介|コグニサイズについても

家族や地域とのコミュニケーションを増やす

孤独感や疎外感も徘徊の原因となるため、家族や地域とのコミュニケーションを増やすことも心がけてみましょう

家族が認知症の方と接する際には、相手の話を最後まで聞き、共感的な態度で接すると良いでしょう。たとえ同じ話を繰り返しても、否定せずに受け止めることが大切です。地域のコミュニティや趣味のサークルなどに参加し、社会とのつながりを維持することも、徘徊予防に効果的です。

近所の方々にも認知症であることを理解してもらい、徘徊時の協力を得られるよう、日頃からコミュニケーションを取っておくことが重要です。

GPS機器やカメラなどの見守りツールを活用する

近年では認知症による徘徊に備え、さまざまな見守りツールが利用できるようになりました。

たとえばGPS端末・見守り端末を常に身につけてもらい、家族が位置情報をすぐに把握できるようにすると安心です。靴に内蔵するタイプやペンダント型など、本人が嫌がらない形状のものを選ぶと良いでしょう。

また、玄関や居室にセンサーを設置し、外出時にアラームが鳴るシステムや、スマートフォンに通知が届くシステムも有効です。子どもやペット用に販売されている見守りカメラを設置することで、家族が外出中でも本人の様子を確認できるメリットがあります。

認知症の徘徊がみられる時の対処法

認知症による徘徊がみられるようになった際には、次のようなポイントを踏まえて対処することが大切です。

  • 責めない・叱らない
  • 他のことに注意を向けさせる
  • 徘徊しようとする理由を聞いてみる

それぞれ詳しく解説しますので、徘徊の低減のためにもぜひ取り入れてみてください。

責めない・叱らない

徘徊が起こった際の対応で最も重要なのは、本人を責めたり叱ったりしないことです。認知症の方にとって、徘徊は必要な行動として認識されているため、否定されることでさらなる混乱や不安を招いてしまいます。

「なぜ勝手に出て行ったの?」「危険だから外に出てはダメ」といった叱責は避け、まずは本人の気持ちを受け止めることが大切です。「心配しました」「無事で良かった」といった、安心と愛情を伝える言葉をかけましょう。

また、徘徊から帰ってきた際は体力的に疲れていることが多いため、まずは休息を取らせ、水分補給や軽食を用意することも大切です。

他のことに注意を向けさせる

徘徊を低減させるためには、他のことに注意を向けさせることで、外出への衝動を和らげることが効果的です。

たとえば、「一緒にお茶を飲みませんか」「テレビで面白い番組をやっていますよ」「昔の写真を見ませんか」といった提案を通じて、他のことに関心を向けると良いでしょう。本人が好きだった歌を流したり、思い出話をしたりすることも有効です。

ただし、無理に外出・徘徊を引き止めることは逆効果になる場合があります本人の気持ちが落ち着くまで、辛抱強く対応することが必要です。

時には家族の方が一緒に外に出て、気分転換を図ることも大切です。

徘徊しようとする理由を聞いてみる

徘徊には必ず理由があります。その理由を聞いて理解することで、適切な対処ができるようになるかもしれません。「どちらに行かれるのですか?」「何か困ってることはある?」といった質問を優しく投げかけ、本人の気持ちを理解・共感しようとする姿勢を伝えましょう

たとえば「仕事に行かなければ」という気持ちが強いと判明した場合は、「今日はお休みだよ」「もう退職したじゃないか」といった現実的な説明よりも、「お疲れさまでした」「いつもありがとうございます」といった、本人の気持ちに寄り添う対応が効果的です。

認知症による徘徊に悩んだ時は専門家に相談を

徘徊の問題は、家族・介護者だけで解決することが困難な場合が多くあります。徘徊への対応を家族だけで行おうとすると、介護者が睡眠不足や精神的ストレスで体調を崩してしまうリスクがあります。また、徘徊の不安から介護者が自宅から離れられなくなり、社会的な孤立を招くことも少なくありません。

徘徊の頻度が増えてきた時や、夜間の徘徊により家族の睡眠が妨げられている時などは、地域包括支援センターやケアマネジャー、認知症の専門医など、専門家の手を借りるのが効果的です。

一人で悩まず、早めに専門家に相談することで、認知症の方の安全を守りながら、家族の負担も軽減できる解決策を見つけやすくなるので、ぜひ検討してみてください。

当院・丹沢病院について

認知症は、症状によっては薬と保持機能の活用で発症や進行を遅らせることができ、早い治療によって健康な時間を長くすることができます。

当院・丹沢病院(精神科・心療内科・内科)では認知症を専門とする医師が在籍し、患者様に適切な治療を実施いたします。(診断により、入院も可能です)

なお、ご本人が受診したがらない、まずはご家族だけで相談したい、というお考えやお悩みをお持ちのご家族さまのためにも、医師による「もの忘れ相談」 を開設しています。

※ご本人様同伴でのご来院はもちろん、ご家族のみでのご来院も可能です。

まずは下記からご相談ください。

まとめ

認知症による徘徊は、本人の記憶障害や不安、過去の習慣などが作用して起こる症状です。家族にとって大きな不安となりますが、適切な理解と対応を通じて、徘徊の低減・予防を図ることができます。

重要なのは、本人を責めることなく、その気持ちに寄り添いながら、安心できる環境を整えることです。また、GPS機器などの見守りツールを活用したり、他のことに注意を向けさせたりすることも有効です。

徘徊の問題に直面した際は、一人で抱え込まず、専門家や地域の支援も積極的に活用してみてください。適切な支援を受けることで、認知症の方もその家族も、より安心して生活しやすくなるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次