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2020年03月15日

論文・発表・出版物実績

新専門医制度の基本コンセプトと当院における研修の現状について

丹沢病院は秦野市にある314床の精神科病院です。単科の精神科病院では珍しく、内科の常勤医師が2名いることが特徴です。常勤医師の年齢層は40歳前後で、それぞれ皆出身大学は様々ですが、学閥的な隔たりはありません。そして、その和気あいあいとした雰囲気の中で、精神科医は身体合併症をなんら躊躇することなく内科医に相談できる体制になっています。

 当院では、東海大学精神科を「専門研修基幹施設」とする「専門研修連携施設」として、2019年4月より卒後3年目の先生の受け入れを行なっています。今年度は3人の先生が半年交代で研修しました。認定された研修施設群に於いて指導責任者の下、研修プログラムに従った研修が行われたかを評価するため、資格審査と研修評価の後、筆記試験と口頭試問が行われ、合格者は「専門医機構」により「専門医」として認定されます。

 また精神科には精神保健指定医という資格もあり、卒後3年目の先生は専門医のみならず、指定医資格の取得も目指すことになります。2018年度から新しくなった専門医制度に続いて今年度より指定医制度も新しくなり、大変厳しい新規申請等に係る事務取扱要領となりました。

 ここでその一端をご紹介しますと、「精神科実務経験告示に定める5例以上の症例については、精神病床を有する医療機関において常時勤務し、指導医の指導のもとに自ら担当として診断又は治療等に十分な関わりを持った症例について報告するものであり、入院中においては、少なくとも1週間に4日以上、当該患者について診療に従事したものでなければならない」、「提出するケースレポートのうち1例以上は、申請前1年以内に診療を開始した症例とする。提出するケースレポートのうち2例以上は、申請日の1年前の日より前に診療を開始した症例とする」、「当該症例を、医療保護入院の症例であって、入院時から担当し、かつ、入院時の指定医診察に立ち会った症例として申請する場合には、申請者が入院時の指定医診察に立ち会っているものであること」、「証明を行う指導医は、他の指導医が指導した期間についても当該指導医に連絡する等により確認を行うこと」といったものがあります。そして、これまではケースレポートのみであった審査が、今回の新制度から、必要な知識及び技能を有しているか確認のため、更に口頭試問も実施されることになりました。

 研修中の先生は専門医・指定医資格の両取得を目指し、当院で研修をされましたが、極めて基本的な事柄(①当院での一般的な精神療法・薬物療法について②外来や入院での基本的な仕事について③多職種との連携について)の指導にのみ終始し、不十分な点も多々あったかと思います。例えば、症例検討会やクルズス、また、指導医に同行した回診などが十分に行えなかったことはこれから改善していかなければならない点であり、研修のあり方の更なる模索が必要だと思われます。

 一方、研修中の先生からは、「安定している患者さんだが、抗精神病薬が多剤になっており、どうすれば単剤化できるのか」、「慢性期のほとんど症状のない患者さんを一度診察しただけで、どうして医療保護入院が妥当であると言えるのか」といった、臆することない率直な疑問や、「もっと当直したい」という体力あふれる頼もしい言葉などが聞かれ、大変新鮮に感じました。
 最後に今後の展望としましては、指導する側・される側という垣根を超え、共に学んでいくという姿勢の中で、互いの更なる成長・発展に繋げていけたらと望んでいます。

丹沢病院 院長 関口 剛
神奈川県医師会 勤務医部会報 2020.3 No.20 掲載分より引用