湯沢 由美 山口 創生 行實 志都子 八重田 淳
抄録:動機の自律性を高めることは、自己実現を含有するライフキャリア促進において重要な課題である。しかしながら、精神疾患を伴う人は、自律性が低下していることがある。したがって、彼らの自律的動機促進の方法を検討するために、その枠組みを探ることが必要である。米国において開発された包括的自律性指標を日本語に翻訳し、「働こうとする」、「自分らしく生きようとする」自律性に関する質問紙を作成し、就労移行支援事業所および精神科デイケアの利用者に回答を依頼して、自律性の因子構造を探索した。「働こうとする」では218名、「自分らしく生きようとする」では344名から回答を得た。その結果、「自尊」「自立」といった本邦の精神科領域特有の因子を含む、それぞれ4因子構造が導き出された。これらは本邦特有の自己観に基づく自己実現プロセスを反映している可能性があるため、それを前提とした枠組みの更なる精査が必要である。
「臨床精神医学」53(11):1391―1399, 2024